農地を宅地として、売りたい又はそこに家を建てたいときには、農地法の許可が必要です。この許可のない売買契約や貸借契約(有償無償問わず)は無効となり、法務局に所有権の移転登記を申請しても受け付けてもらえません。なお、法務局では許可書のない田、畑等から宅地等への変更は同様に受け付けてもらえませんので注意してください。農地転用許可の申請は添付書類が多く、又郵便やネットでの申請が出来ず申請書の提出に1回、受領に1回農業委員会事務局に足を運ばなければなりません。農地転用の申請土地が遠隔地の場合は申請者の負担が大きいです。 申請書に添付する書類は自治体ごとに違うため、申請人又は代理人は各自治体の農業委員会に事前に確認する必要があります。 水利権者の同意書の中には水利委員の外に行政区長及び水利土木委員などの署名・押印を求める自治体もあります。この水利権者から印をもらう時に水利組合から協力金という名目でいわゆる「ハンコ代」を数万円から十数万円を請求されることがあります。このように農地転用の許可申請は自治体により添付書類が異なりますので、代理人は事前に水利組合に確認して費用を見積もることが大事です。近郊の方はもちろん、遠隔地に在住されている方で、福岡市周辺に農地をお持ちで宅地に転用したいとお考えの方は、当事務所へお気軽にご相談下さい。
都市計画法の適用されている地域においては、市街化区域と市街化調整区域とがあります。農地を転用したい場合は、該当する農地がどの区域に属しているか市役所などで確認しておきます。市街化区域内の農地は農地法による届出を行う必要があります。これは、届出を農業委員会へ提出すれば受理されます。市街化調整区域でない農地は県知事等の許可が必要です。市街化調整区域は、原則として家を建てられませんので、土地が安いからといって安易に購入することは注意を要します。都市計画図は、市役所で閲覧したり、購入することができます。
・市街化区域
すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域(都市計画法)で、農地転用には届出することになります。
・市街化調整区域
市街化を抑制すべき区域(都市計画法)
・未線引区域
市街化区域と市街化調整区域とに分け都市計画決定がなされた地域を線引き地域といい、この定めのない地域を未線引き地域といいます。未線引き地域では、市街化調整区域がありません、建築物の規制がないかわりに、用途地域内であっても、当該土地が農地であれば農地法の規制が適用され、県知事の許可を要することになります。
・用途地域
都市計画内の区域内には、商業地域、工業地域、第一種住居地域など12地域が指定 された地域があり、それを総称して用途地域といいます。
・農地の転用
農地等を住宅、駐車場、資材置き場、道路、植林等人為的に農地を耕作伊賀の目的で利用することをいいます。(農地法)
・農地
耕作を目的に供される土地をいいます。(農地法)
・採草牧草地
農地以外の土地で、主として耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供されるも のをいいます。(農地法)
・田
農耕地で用水を利用して耕作する土地(不動産登記法)
・畑
農耕地で用水を利用しないで耕作する土地(不動産登記法)
・牧場
獣蓄を放牧する土地 牧畜のために使用する建物の敷地、牧草栽培地及び林地等で牧場地域内にあるものは、すべて牧場(不動産登記法)
登記官は、農地を農地以外の地目とする地目変更の登記申請については、農地行政と調整を図るため、実務上農地に該当しない旨の都道府県知事又は農業委員会の証明書、あるいは転用許可証明書のいずれかの書面を添付する取扱いになっています。これらの書面が添付されていない場合は、関係農業委員会に当該申請に係る土地についての農地法4条もしくは5条の許可の有無、対象土地の現況その他の農地の転用に関する事実について照会するものとされています。その回答を受けるまでの間は、当該登記申請に係る事件の処理を保有する。ただしその照会後2週間を経過したときはこの限りでない。 (昭和56.8.28民三第5402号)
1.農地を農地以外に転用するとき
市街化区域内にある農地の転用は、あらかじめ農業委員会へ届け出を行えば許可は必要ありません。農地の所有者が宅地等に転用する場合は第4条による申請をします。実際には宅地に転用してから売買することが多いと思われます。
制限の種類 | 制限の内容 | 許可の申請者 | 申請 | |
---|---|---|---|---|
農地法3条 | 権利移動の制限 | 農地の権利を移転する場合 | 譲受人・譲渡人 | 農業委員会 |
農地法4条 | 農地の転用制限 | 農地の所有者が自ら農地を転用する場合 | 土地所有者 | 農業委員会 |
農地法5条 | 農地の転用のための権利移動の制限 | 事業者等が農地を買って(借りて)転用する場合 | 売主(土地所有者)・買主 | 農業委員会 |
2.提出書類
福岡市の場合
提出書類 | 提出部数 | 備考 |
---|---|---|
届出書 | 1 | 4条、5条 |
位置図(案内図) | 1 | 1/2500~1/10000程度 |
土地登記簿 | 1 | 法務局発行 |
誓約書 | 1 | |
住民票 | 1 | 所有者のの現住所が土地登記簿謄本に記載された所有者の住所と違う場合 |
届出をする自治体、又は利用目的により添付書類が違うことがあります。提出部数も自治体により若干違いがありますので、土地の属する自治体(農業委員会)へ問い合わせて下さい。
届出書を以下の項目を審査し、適法であれば受理通知書が発行されます。この受理通知書は土地登記申請に使いますので大事に保管しておいて下さい。
①届出書に係る農地が市街化区域ないの土地であるか
②届出書の法定記載事項が記載されているか
③農地法で定められた書類が添付されているか
3.標準処理期間
福岡市の場合の届出書の受付日から翌週の木曜日以降には受理通知書が交付されます。これは各自治体により違いますので、農業委員会に問い合わせて下さい。
1.農地転用許可基準
(1)立地基準
農地の区分 | 営農条件、市街地化の状況 | 許可方針 |
---|---|---|
第3種農地 | 鉄道の駅が300m以内にある等の市街地の区域又は市街化の傾向が著しい区域内の農地 | 原則として許可 |
第2種農地 | 市街化が見込まれる農地又は生産性の低い小集団の農地 | 第3種農地に立地することが困難であるか、又は不適当と認められる者に限り原則として許可周辺の他の土地に立地することが出来ない場合等は許可 |
第1種農地 | 20ha以上の規模の一団の農地、土地改良事業等の対象になった農地等良好な営農条件を備えている農地 | 原則として不許可(ただし、土地収用対象事業の用に供する場合等には許可) |
甲種農地 | 市街化調整区域内の土地改良事業等の対象となった農地(8年以内)等特に良好な営農条件を備えている農地 | 原則として不許可(ただし、土地収用法第26条告示に係る事業の場合等に許可) |
農用地区域内農地 | 市町村が定める農業振興地域整備計画において農用地区域とされけた区域内の農地 | 原則として不許可 |
(2)一般的基準
事業実施の確実性 | 資力及び信用があると認められた者 転用行為の妨げとなる権利を有する者の同意があること。 行政庁の許認可等の処分の見込みがあること。 遅滞なく転用面積が転用目的からみて適正と認められること。 |
被害防除 | 周辺農地に係る営業条件に支障を生ずるおそれのないこと。 農業用用水排水施設の有する機能に支障を生ずるおそれのないこと。 土砂の流出、崩落等災害を発生させるおそれのないこと。 |
2.制限と許可権者
制限の種類 | 制限の内容 | 許可の申請者 | 許可権者 | |
---|---|---|---|---|
農地法3条 | 農地の権利移動制限 | 4条、5条 | 土地所有者 | 県知事 |
農地法4条 | 農地の転用制限 | 農地の所有者が自ら農地を転用する場合 | 土地所有者 | 県知事 4ヘクタールを超えると農水大臣 |
農地法5条 | 農地の転用のための権利移動 | 事業者等が農地を買って(借りて)転用する場合 | 売(土地所有者)買主 |
3.申請書類
提出書類 | 提出部数 | 備考 |
---|---|---|
申請書 | 1 | |
位置図(案内図) | 1 | 1/2500~1/25000程度 |
公図の写し | 1 | 法務局発行、隣接地の地目・所有者を明記 |
土地登記簿 | 1 | 法務局発行 |
住民票 | 1 | 所有者のの現住所が土地登記簿謄本に記載された所有者の住所と違う場合 |
土地改良区の意見書 | 1 | 申請農地が土地改良区内にある場合 |
事業計画書 | 1 | |
資金計画書 | 1 | |
被害防除計画書 | 1 | |
水利権者の同意書 | 1 | |
関係法令の許可の写し | 1 | 関係法令の許可を要する場合 |
定款 | 1 | 申請者が法人の場合 |
法人登記簿 | 1 | 申請者が法人の場合 |
配置図 | 1 | |
建物平面図・立面図(道路・排水経路を明記) | 1 | 建物等を新築する場合 |
縦横断図 | 1 | 転用目的が農家住宅、農業用倉庫(施設)場合 |
注)この添付書類は福岡県久留米市の例です。各自治体により提出書類に若干の違いますので農業委員会に問い合わせ下さい。
4.標準処理期間
福岡市の場合は、受付期間内(毎月20日まで)に申請を受理したものについては締切日から40日後です。各自治体により違いますので各自治体に問い合わせてください。
許可を受けずに農地の転用を行った者 | 3年以下の懲役又は300万円以下の罰金 |
偽りその他不正の手段により許可を受けた者 | |
農林水産大臣又は都道府県知事の工事停止、現状回復等の違反是正措置命令に従わなかった者 | 6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金 |
遠隔地に在住されている方で、福岡市周辺に農地をお持ちで転用して売却などをお考えの方は、当事務所へお気軽にご相談下さい。電話でのお問い合わせやご相談を予約受け付けています。